東京地方裁判所 昭和47年(わ)207号 判決 1972年6月16日
本籍
長野県岡谷市八五四二番地の一
住居
東京都北区西ケ原一丁目四〇番一〇号
古河ガーデンマンション
会社役員
塚原利太
昭和一二年八月一一日生
右の者に対する所得税法違反被告事件について、当裁判所は検察官米田昭出席のうえ審理をし次のとおり判決する。
主文
被告人を懲役四月および罰金四〇〇万円に処する。
右罰金を完納できないときは金四万円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
被告人に対し本裁判確定の日から一年間右懲役刑の執行を猶予する。
訴訟費用は被告人の負担とする。
理由
(罪となるべき事実)
被告人は東京都荒川区東日暮里六丁目六〇番五号においてバー「ナイト」を、同都品川区東五反田においてキヤバレー「フタバ」を、同都豊島区駒込においてバー「パレス」をそれぞれ経営していたものであるが、自己の所得税を免れようと企て、売上の一部を除外して無記名および架空名義の預金を蓄積する等の不正な方法により所得を秘匿したうえ
第一、昭和四三年分の真実の課税総所得金額が一八九七万一〇〇〇円あつたのにかかわらず、昭和四四年三月一五日東京都荒川区荒川一丁目一番二号所在の所轄荒川税務署において、同税務署長に対し、同年分の課税総所得金額が四六四万八〇〇〇円でこれに対する所得税額が一四六万〇九〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額八九九万三一〇〇円と右申告税額との差額七五三万二二〇〇円を法定納期限までに納付せず、もつて同額の所得税を逋脱し、
第二、昭和四四年分の真実の課税所得金額が二〇九三万四〇〇〇円あつたのにかかわらず、昭和四五年三月九日前記荒川税務署において同税務署長に対し、同年分の課税所得金額が六八九万二〇〇〇円でこれに対する所得税額が二四〇万七七〇〇円である旨の虚偽の所得税確定申告書を提出し、同年分の正規の所得税額一〇〇〇万九〇〇円と右申告拙額との差額七五九万三二〇〇円を法定納期限までに納付せず、もつて同額の所得税を逋脱し
たものである(各年度の所得金額および所得税額の算定は別表一ないし三記載のとおり)。
(証拠の標目)
一、被告人の当公判廷における供述、検査官に対する供述調書二通ならびに大蔵事務官に対する質問てん末書二三通
一、田中佐門、丹野節子の検察官に対する各供述調書
一、田中佐門、崎山高毅に対する大蔵事務官の各質問てん末書
一、大蔵事務官深谷六四郎作成の昭和四六年一二月二五日付調査総勘定元帳二冊
一、三木清一(二通)、林ミセ(三通)、野崎吉弥(二通)、木島隆、塩田誠、田中清文、新井元次、多田勝良、金子良平、鳩田勝一、藤城茂久、石田秀夫(二通)、今井道夫、山口幸徳、小滝芳宏、山川英雄(三通)、山本勇一、野田博光、鈴木一郎、横瀬丈二、鏡勇、荒木英輔、大塚電話局長、伊藤隆一、株式会社出雲屋(二通)、金井数馬、春原英喜(三通)、木村憲司、山本好彦、石井伊佐男、尾花昭夫、石井金雄、小野錦、阿久津秋早、冨永冨雄、仁科勝人(二通)、河口泰造、陣杏郷、林よし子、篠原幸作、加藤忠慶、仲田貞寿、日吉照夫(二通)、安田一栄、蓮尾芳雄、岡野禎司、熊谷康、須長節(二通)、三浦敬二、増谷真一、中央信託銀行株式会社、市川忍各作成の取引内容の照会に対する回答書
一、塚原祐三(二通)、丹野節子(三通)、大橋清蔵、木津谷道子、被告人(四通)各作成の上申書
一、伊藤則次、武井美雅、中島孝治、大橋清蔵、宇田川欽次各作成の証明書
一、大蔵事務官佐藤重雄、同深谷六四郎(七通、いずれも昭和四六年一一月二六日付)各作成の調査書
一、押収にかかる次の各証拠物(いずれも押収番号は昭和四七年押第七一三号、括孤内は枝番を示す)
昭和四三年分の所得税確定申告書(1)、昭和四四年分の所得税確定申告書(2)、昭和四三年分所得税青色申告決算書(3)、昭和四四年分所得税青色申告決算書(4)、解約済スター積立預金通帳(一六通)(5)、スター積立預金通帳二通(6)、昭和四三年フタバ裏方給与明細表(7)、昭和四四年フタバ裏方給与明細表(8)、フタバ裏方大入支給明細表(9)、昭和四三年フタバ社交給与明細表(10)、昭和四四年フタバ社交給与明細表(11)、昭和四三年フタバ社交特別出勤手当指名料明細表(12)、昭和四四年フタバ社交特別手当指名料明細表(13)、昭和四三年ナイト給与等明細表綴(14)、昭和四四年ナイト給与等明細表綴(15)、昭和四四年パレス給与明細表(16)、昭和四四年分出勤簿三綴(17)、昭和四三年分フタバカウンター仕入表等八綴(18)、昭和四三年分フタバ出金伝票綴九綴(19)、昭和四三年分ナイト仕入等綴八綴(20)、昭和四三年分請求書等綴(21)、昭和四四年分フタバ出金伝票等綴八綴(22)、昭和四四年分ナイト仕入等九綴(23)、昭和四四年パレス仕入等綴二綴(24)、昭和四四年分領収書等綴二綴(25)、使用済保険証券等綴二綴(26)、契約書等綴(27)、当座小切手帳控四綴(28ないし31)、スター積立計算書綴(32)、仕入帳(33)フタバ、ナイトの仕入綴(34)、元帳一二冊(35)、パレス仕入帳二冊(36)、日記帳二綴(37)、銀行勘定帳(38)、営業日誌四綴(39)、ビール在庫帳(40)、ふたば関係売上帳(41)、売掛台帳塚原利太分(42)、請求書控一一冊(43)
(法令の適用)
一、判示各所為につき所得税法二三八条(情状により懲役と罰金を併科)
一、併合加重につき刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(懲役刑)、刑法四五条前段四八条二項(罰金刑)
一、挽刑処分につき刑法一八条一項、四項
一、執行猶予につき刑法二五条一項
一、訴訟費用の負担につき刑事訴訟法一八一条一項本文
よつて主文のとおり判決する。
(裁判官 池田真一)
別紙一 修正損益計算書
自 昭和43年1月1日
至 昭和44年12月31日
<省略>
別紙二 修正損益計算書
自 昭和44年1月1日
至 昭和44年12月31日
<省略>
別紙三
所得税額計算書
<省略>
(注)昭和43年分の税額計算(付則別表第一)
課税総所得金額(18,971,000円)×55%-1,430,700円=9,003,300円
昭和44年分の税額計算(付則別表第一)
課税総所得金額(20,934,000円)×60%-2,541,500円=10,018,900円